Snowflake World Tour 2026 Tokyoが示す、エージェンティックAI時代に必須の「セマンティック層」と「オントロジー戦略」

Snowflake World Tour 2026 Tokyoが示す、エージェンティックAI時代に必須の「セマンティック層」と「オントロジー戦略」
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aslead編集部
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こんにちは。aslead編集部です。
最新ソフトウェア開発のトレンドから、AI・DXツールの効果的な活用法、企業のITガバナンスの強化、業務効率化やDX化を成功に導くソリューションまで、幅広い記事を提供しています。
企業が直面する課題の解決策として効率的なツールの活用方法を探求し、生産性の向上に繋がる実践的な情報をお届けすることを目指します。

2026年9月10日・11日の2日間、国内最大級のSnowflakeイベント「Snowflake World Tour 2026 – TOKYO」が開催されました。Day1ではSnowflakeプロダクト担当上席副社長のクリスチャン・クライナマン氏が、Day2ではCEOのスリダール・ラマスワミ氏が登壇し、いずれのKEYNOTEでも通底していたキーワードが「エージェンティックAI(Agentic Enterprise)」です。ルーチンタスクをAIエージェントが担い、人は方向付けと意思決定に時間を使う組織へ移行する、というビジョンが2日間を通じて語られました。

しかし両日のKEYNOTEで繰り返し強調されていたのは、「AIを導入すればデータの問題は解決する、というのは誤解であり、AIこそが優れたデータ戦略とデータ資産を必要とする」というメッセージです。エージェントに正確な判断をさせるには、セマンティック層(用語や指標の意味を揃える仕組み)オントロジー(概念どうしの関係性や業務ルールを構造化する仕組み)の両方を整備する必要があります。この2つが欠けたままエージェントを導入しても、部門ごとに異なる「売上」の定義に振り回されたり、業務の背景知識を理解しないままの的外れな提案を返したりすることになりかねません。

本記事では、Snowflake導入・データ活用を推進する情シス・データ基盤担当、DX推進/データ活用部門、経営企画の方を主な読者と想定し、①Snowflake World Tour 2026 TokyoのKEYNOTEで示されたキーワード、②エージェンティックAIの実現にセマンティック層とオントロジーの両方が必要な理由、③この整備をコンサル&SIとの協働で効率的に進める方法の3点を整理して解説します。なお、機能名・仕様は執筆時点(2026年9月)のものであり、最新情報はSnowflake公式ドキュメントでご確認ください。

目次

全体像:「データをAI readyにする」という宿題が、エージェンティックAIの土台になる

まず、Day1のKEYNOTEで示された全体像を押さえておきましょう。クライナマン氏は、Agentic Enterpriseを実現する4要素として、①AIモデル、②データとコンテキスト、③ソフトウェアとアプリケーション、④コントロールプレーンを挙げ、Snowflake AI Data Cloudがこの4要素すべてにソリューションを提供すると説明しました。デモでは、部署ごとに異なる「売上」の定義をセマンティックビューで統一し、Snowflake CoCo(データチーム向けエージェント)とSnowflake CoWork(ビジネスユーザー向けエージェント)が同じ定義を参照しながら業務を進める様子が示されています。

そしてKEYNOTEの締めくくりで、クライナマン氏は企業への「3つの宿題」を提示しました。①データを安全にする(モダナイズし、サイロをなくし、適切なセキュリティを確保する)、②データをAI readyにする(正しいセマンティクスとオントロジーを持つ)、③ユースケースを見つけ、エージェントを作り、自律的な活動を始める、の3つです。特に②では「正しいセマンティクスとオントロジーを持つこと」が明言され、その多くをCortex Sense(AIがバックグラウンドでデータ・クエリ・ユーザー行動を観察し、メタデータ・セマンティクス・オントロジーを生成する機能)が代行すると紹介されました。つまり、エージェントを使いこなす前提として、データの意味と関係性を整えておくことが不可欠というのが、今回のKEYNOTEに共通するメッセージです。以降のセクションで、セマンティック層とオントロジーがそれぞれ何を担うのかを具体的に見ていきます。

KEYNOTEが示した2つのキーワード:「セマンティック層」と「オントロジー」

Day1・Day2のKEYNOTEでは、セマンティック層とオントロジーという2つの言葉が、異なる角度から繰り返し登場しました。

  • セマンティックビュー(Day1デモより): 架空のスポーツ興行会社を題材にしたデモでは、部署ごとに売上の定義が異なりダッシュボードの数字が揃わないという課題が描かれました。データエンジニア役がセマンティックビューで売上やLTV(顧客生涯価値)の定義を統一したことで、Snowflake CoCoとSnowflake CoWorkの双方が同じ定義を参照できるようになり、CEO・CFO・営業担当それぞれが矛盾のない数字で議論できるようになっています。
  • Cortex Sense(Day1・要素3の解説より): AI自身がバックグラウンドでデータ・クエリ・ユーザーの行動を観察し、メタデータ・セマンティクス・オントロジーを自動生成する機能として紹介されました。人手による棚卸しの負担を大きく軽減する一方、生成された内容を業務部門がレビューし、精度を高めていくプロセスは引き続き必要になります。
  • ビジネスセマンティクスエンジニアリング(Day2・三井住友トラスト・アセットマネジメント松本氏の講演より): 同社は「ループエンジニアリング(自律的・再帰的にシステムが改善し続ける仕組み)」を安全に回すための3つの技術要素の1つとして、Snowflakeのコメント機能、データの責任範囲の宣言、スキルによる行動規範、そしてナレッジグラフやCortex Senseによるオントロジーを挙げています。約650業務をスキル化し、4,000近いテーブルをオンボーディングしてきた同社の実践は、セマンティック層とオントロジーが単なる用語集ではなく、業務そのものをエージェントに委ねるための構造であることを示しています。

セマンティック層だけでは足りない理由:オントロジーが担う「関係性」

ここで、セマンティック層とオントロジーの役割の違いを整理しておきましょう。セマンティック層は、「売上」「アクティブユーザー」といった用語や指標の意味・計算方法を1つに揃える仕組みです。これにより、人間が問い合わせてもAIエージェントが問い合わせても、同じ言葉に対して同じ答えが返るようになります。

一方で、オントロジーが担うのは、概念どうしの関係性や業務ルールの構造化です。「顧客」「契約」「商品」「担当者」といったエンティティが互いにどう関連し、どの業務プロセスでどう扱われるべきかという知識体系を表現します。セマンティック層が「言葉の意味を揃える辞書」だとすれば、オントロジー「業務の文脈と因果関係を表す地図」**にあたります。Day1のデモで「都市ごとの人件費と売上を比較して収益性はどうか」という問いにエージェントが的確な洞察を返せていたのは、指標の定義(セマンティック層)だけでなく、都市・興行・コストといった概念間の関係性(オントロジー)をエージェントが理解していたためだと考えられます。

三井住友トラスト・アセットマネジメント様の事例のように、業務をスキルとして自然言語で定義し、それをナレッジグラフやオントロジーで裏付けることで、エージェントは単なる質問応答にとどまらず、一連の業務プロセスを任せられる存在になっていきます。セマンティック層とオントロジーは対立する概念ではなく、「意味を揃える」ことと「関係性を構造化する」ことの両輪として、あわせて整備することが求められます。

整備を阻む現実的なハードル

セマンティック層とオントロジーの重要性は理解できても、実際に整備を進めようとすると、多くの企業が次のような壁に直面します。

  • 業務知識と技術の両方が求められる: 指標の定義や業務プロセスの関係性を正しく言語化するには、業務部門の深い知識が欠かせません。しかし、それをセマンティックビューやオントロジーとして実装するには技術的な知見も必要で、両者を兼ね備えた人材は社内に限られています。
  • 部門横断の合意形成に時間がかかる: 「売上」の定義を1つに統一するだけでも、関係部門との調整や既存レポートへの影響確認が発生し、現場だけで完結させるのは容易ではありません。
  • 一度整備して終わりにはならない: 組織変更や新規事業の立ち上げに合わせて、用語の定義や業務プロセスの関係性は変化し続けます。継続的にメンテナンスする体制がなければ、整備した内容はすぐに陳腐化します。
  • どこから手をつけるべきか判断しづらい: 全社の業務を一度に整備しようとすると範囲が広すぎて着手できず、逆に場当たり的に始めると全体像のないまま個別最適が積み上がってしまいます。

これらの壁は、Cortex SenseのようなAI機能が自動生成を支援してくれるとしても、「どの業務から始め、どう合意形成し、どう運用に乗せるか」という進め方の設計までは代替してくれません。ここに、NRIが伴走する意義があります。

コンサル&SIとの協働がセマンティック層・オントロジー整備を効率化する

NRIのようなコンサルティングとシステムインテグレーション(SI)の両方を担う企業が伴走することで、セマンティック層とオントロジーの整備は次のように効率化できます。

  • 業務ヒアリングとモデル化の橋渡し: 業務部門への丁寧なヒアリングを通じて指標の定義や業務プロセスの関係性を整理し、それをセマンティックビューやオントロジーとして実装可能な形に翻訳する役割を担います。技術と業務のどちらかに偏らず、両方の言語で会話できる点が強みです。
  • 優先順位づけと段階的な展開の設計: 三井住友トラスト・アセットマネジメント様が650業務を洗い出し優先度をつけて着手したように、全社を一度に整備するのではなく、インパクトの大きい業務から段階的に広げる進め方を、豊富な支援経験をもとに設計できます。
  • 部門横断の合意形成を支援する第三者としての立場: 社内の部門間だけでは進みにくい定義の統一や責任範囲の宣言も、外部の第三者が間に入ることで客観的な議論がしやすくなります。富士フイルム様の事例で語られていた「法務・ESG部門と初期からワンチームで進める」という考え方は、社内リソースだけでなく外部の専門家を交えることでも実現しやすくなります。
  • 継続運用・内製化への移行支援: 整備して終わりにせず、Horizon CatalogやCortex Senseが生成した内容を業務部門がレビュー・更新し続けられるよう、運用ルールの設計や社内の推進メンバーの育成まで含めて支援することで、外部依存を段階的に減らしながら自走できる体制づくりを後押しします。

セマンティック層とオントロジーの整備は、一度きりのプロジェクトではなく継続的な運用が前提になります。だからこそ、技術実装力とコンサルティング力を併せ持つパートナーと協働することで、遠回りせずに整備を軌道に乗せやすくなります。

ベストプラクティス

セマンティック層とオントロジーの整備を進めるうえで押さえておきたいポイントをまとめます。

  • セマンティック層とオントロジーを両輪で捉える: 用語や指標の定義統一(セマンティック層)だけで満足せず、概念間の関係性や業務ルールの構造化(オントロジー)まで視野に入れて整備計画を立てます。
  • 業務部門を整備の主役に据える: 定義や関係性を最もよく知るのは技術部門ではなく業務部門です。技術部門だけで完結させず、業務部門を巻き込んだレビュー体制を組み込みます。
  • インパクトの大きい業務から段階的に着手する: 全社一斉整備を狙わず、優先度の高い業務・指標から始めて、成果を確認しながら対象を広げます。
  • AIによる自動生成を「たたき台」として活用する: Cortex Senseのような自動生成機能は有用な出発点になりますが、生成結果は必ず業務部門がレビューし、精度を高める運用を組み込みます。
  • 継続的なメンテナンス体制を最初から組み込む: 整備を1度きりのプロジェクトにせず、組織変更や業務変化に応じて定義や関係性を更新し続ける担当・仕組みをあらかじめ用意します。

よくある懸念とその対応方法

セマンティック層・オントロジー整備について、よく挙がる懸念とその対応をまとめます。

  • 懸念①:「セマンティックビューを整備すれば、それだけでAIエージェントは正確に answer してくれるのでは?」 対応: セマンティックビューは用語や指標の定義を揃えるものであり、概念間の関係性や業務プロセスの背景知識まではカバーしません。的確な洞察や提案までエージェントに求める場合は、オントロジーによる関係性の構造化もあわせて整備する必要があります。
  • 懸念②:「Cortex Senseが自動生成してくれるなら、人手での整備は不要になるのでは?」 対応: Cortex Senseはメタデータ・セマンティクス・オントロジーの生成作業を大きく省力化しますが、生成結果が業務の実態と合っているかは業務部門によるレビューが欠かせません。自動生成を「たたき台」と位置づけ、レビュー・修正のプロセスを運用に組み込むことが重要です。
  • 懸念③:「部門ごとに定義が異なる状態を、社内だけで統一できるか自信がない」 対応: 定義の統一には部門間の利害調整が伴い、社内の力関係だけで進めると停滞しがちです。NRIのような第三者のコンサルチームが客観的な立場で間に入ることで、合意形成がスムーズに進むケースが多くあります。
  • 懸念④:「整備にどこから着手すればよいか判断がつかない」 対応: 全社の業務やデータを一度に整備しようとすると範囲が広すぎて頓挫しがちです。まずはビジネスインパクトの大きい業務や指標を絞り込み、そこから段階的に対象を広げる進め方が有効です。優先順位づけ自体も、支援実績の豊富なパートナーに相談することで精度が上がります。

本記事では、Snowflake World Tour 2026 TokyoのKEYNOTEで示された「エージェンティックAI」というキーワードを軸に、セマンティック層による意味の統一と、オントロジーによる関係性の構造化の両方が、エージェントを本番の業務に委ねるための土台であることを解説しました。要点は、AIモデルやツールの導入以前に、データの意味と関係性を整える戦略が不可欠という点にあります。

もっとも、セマンティック層やオントロジーの整備は業務知識と技術実装の両方が求められるうえ、一度きりで終わらない継続的な取り組みでもあり、社内リソースだけで最適な進め方を描くのは容易ではありません。NRIのasleadでは、Snowflakeの導入支援をはじめ、セマンティックビューの設計・実装支援、業務プロセスの可視化からオントロジー設計までを見据えたデータ活用・AI活用コンサルティングを提供しています。「エージェントを導入したいが、何から手をつければよいかわからない」「部門ごとに異なる定義をどう統一すればよいか悩んでいる」といった段階からで構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。