100チームの授業管理を”Miro”で実現! 【自由ヶ丘学園高等学校】
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aslead編集部
こんにちは。aslead編集部です。
最新ソフトウェア開発のトレンドから、AI・DXツールの効果的な活用法、企業のITガバナンスの強化、業務効率化やDX化を成功に導くソリューションまで、幅広い記事を提供しています。
企業が直面する課題の解決策として効率的なツールの活用方法を探求し、生産性の向上に繋がる実践的な情報をお届けすることを目指します。
大量の授業やプロジェクトの管理に困られている先生方も多いのではないでしょうか?
自由ヶ丘学園高等学校では、STEAM教育*やデザイン工学探求などの新しい教育のデザインに取り組まれ、100のプロジェクト進捗管理と生徒のチーム間のコミュニケーション活性化のためにビジュアルワークスペースMiroを導入されています。教育戦略室長の今井 朝子先生にお話を伺いました。
プロフィール
理事・教育戦略室長 今井 朝子先生
(株)日立製作所にて研究開発に従事した後、アメリカの企業にて東京大学とイリノイ大学とのVRの国際研究プロジェクトに参加し、アプリケーション開発に従事。その後ユーザビリティーに関するフリーランサーとして多数企業の新規事業提案等に携わる。2019年10月より現職。STEAM教育を担当し、世界で活動できる人材育成に取り組んでいる。
総務省情報通信審議会専門委員、OECD SSES National Project Manager、Salzburg Global Seminar Fellow(世界をより良くするために活動しているリーダーのための国際NPO)、Karanga執行役員(社会性と情動の学び、生きる力の学びを広めるために活動している国際アライアンス)群馬県非認知教育専門家委員会委員、SEL Japan 運営メンバーを兼務するなど自身の研究とネットワークを教育の現場に活かしている。
御校について教えてください
校訓である「人に親しまれ信頼される人間になれ」の通り、人間教育を基軸にした学校です。1930年創立の歴史の長い学校です。
人間教育を基軸にしているため、社会性や情動の教育(Social Emotional Learning)を重視していますが、国際化の時代には、自分の意思をはっきり伝え、論理的に考える能力が求められます。そこで、人間教育を基盤にしながら、世界で活躍するためのスキルセットを教えることを目指しています。
教育戦略室とはどのような活動をされているのでしょうか
私が所属する教育戦略室のミッションは、教育の方向性を決めることです。具体的には、人間教育を基盤にしつつ、世界で活躍できる人材を育成するために、世界から情報を集め、本校に適した新しい教育をデザインし実装することを目指しています。また、さまざまな企業や研究所、海外の学校との連携も担当しています。このような部門は教育現場では非常に珍しく、他の学校ではあまり見られない取り組みだと思います。
私は海外の企業やベンチャー等で経験を積んできたのですが、次第に子供たちのために何かを残したいという思いが強くなり、ご縁もあって教育の現場に入りました。個人的には、海外の学校で初めて学びを楽しいと感じたので、ぜひ子供たちにも同じような学びの楽しさを伝えたいと考えています。「世界をよりよくするために世界の人と共同して活動できる人間を育てる」というサブスローガンを掲げ、世界を牽引している多くの方々とのネットワークを活かし、新しい教育のデザインに取り組んでいます。
Miro導入前はどのようなお悩みを抱えていたのでしょうか
STEAM教育*やデザイン工学探求では、チームでの協働を重視した教育を実施しています。そこで約400名の生徒を4人チームに分けて、約100チームのプロジェクトを実施するのですが、この進捗管理に悩んでいました。また、異なるチーム間でのコミュニケーションを活性化する方法も課題で、具体的には、次のような課題がありました。
・当時Jamボードを使用していたのですが、紙芝居のように1枚に1チーム、1プレゼンとなるため、横断した課題について対応できない。
・全体の流れやフローを俯瞰で見ることができない。
・プロジェクトごとの縦割りだと他のチームとの共有ができないため、他チームのプロジェクトを見ながら自分のアイディアとかけあわせていく楽しみができない。
これらの課題を解決する良い方法をずっと探していました。
*STEAM教育とは、Science(科学)+Technology(技術)+Engineering(工学)+Mathematics(数学)にArts(芸術・教養)を横断的に学習する教育
Miro導入のきっかけについて教えてください
前職がコンサルタントでグーグルクラウドを活用していたことから、Google Workspace for Educationを導入してみましたが、一般的な授業を実施するためのサポートは大変良かったのですが、アイディアを共有しながら自由で創造的な協働を支援する力が不足しており、抱えていた課題を解決するには至りませんでした。そんな時、EUの政策を行う研究所、EU Joint Research Centerで働く友人とアフリカの子供達とコミュニケーションをとる話が出た際、友人がMiroを使っていて、面白そう!と思ったのがMiroを知ったきっかけです。
また、私はオーストリアに拠点を置いている国際NPO「Salzburg Global Seminar」のフェローでもあり、EUやインドの人々との協働を行っています。共同研究立ち上げイベントに参加した際、世界中の多くの人が言語や時差を超えてMiroを使って交流しているのを目の当たりにし、Miroへの興味が確信に変わりました。
様々なツールは比較されましたか
他にも同様のオンラインホワイトボードツールがあることは知っていましたが、一度導入すると簡単にやめられないため、慎重に選定しました。正直なところ気持ちとしてはMiro一択でしたね。多くの企業が利用していることもあり、多くの資料を俯瞰できる機能やAIを使った機能など、協働を頻繁に行うユーザーが必要とする機能がどんどん取り入れられていることが魅力でした。
また、国際的に普及しているので、海外の人に「Miroで作業しよう」というと、すぐに対応できることも魅力でした。最終的には、信頼できる世界の巨大な団体が使用しているという信頼性と、私自身が使い慣れていて生徒が簡単に使えること、そして将来的にも使い続けられることが重要だと考え、Miroを選びました。
Miroを実際にどのように使用されていますか
Project Based Learning (PBL) では、各チームの意見集約や進捗管理、チーム間での情報共有、プロジェクト企画などにMiroを活用しています。生徒全員がMiroを使用しており、彼らの吸収力は本当に早いですね。先生方は非常に忙しいため、まずは4名の先生が積極的にMiroを活用し始めています。最初は少数でも、こうやって使えばいいのかと他の先生方に広がっていくことを期待しています。購入してから1か月以内に学校全体で使用を開始できたため、導入は非常にスムーズでした。
現在、STEAMの授業を受けている生徒全員が新たなプロジェクトの立ち上げをMiroを使って進めています。考えるだけでなく、実際に応募できることでモチベーションが上がるため、大人に混じって起業のアイディアを提案する「東京都スタートアップゲートウェイ」などをゴールに設定しました。教育としては、企画が通るという結果だけを目標にしているのではなく、プロジェクトを通じて考える過程を学びながら、創造力や提案力や自己効力感を養う練習の場と考えています。Miroは視覚的で創造力を養うこと、共同作業やコラボレーションに最適だと感じていますので、友達と一緒に作り上げる楽しさを感じて欲しいです。
Miroのどのような所を気に入っていますか?
とにかく俯瞰できることが一番ですね。今までは1プロジェクトごとしか見られませんでしたが、Miroならズームイン・ズームアウトを駆使して、大量のプロジェクトも俯瞰できる点が最大のメリットだと感じています。Miroボードに展開することで、全員が常に情報を共有でき、全体の流れや進捗状況も把握できて非常に便利です。わからないところを他のチームの真似をしてみるなど、お互いに助け合えて良い影響があります。
次に、Miroボードが無限に広げられる点です。新しい先生が入られても過去の経緯から全て確認でき、生徒の成果もすべてMiroボードで確認可能なので、これもとても嬉しい機能です。
テキストだけでなく、写真や絵などのサムネイルリンクを貼ることも非常に便利です。異なる言語を話す海外の人との交流にも役立ちますし、「イベント」とテキストやURLが記載されているより、バナー、サムネイルがある方が、メディアに慣れている現代の生徒たちの興味関心を引くので役立っています。
また、資料やプリントを配布しても、生徒が失くしてしまうことが多いのですが、Miroに全ての情報を集約すれば、生徒も先生も情報検索に困りません。メールでは探すのに時間がかかりますが、Miroなら一元化された情報をすぐに見つけられるのもいいですよね。一番ハードルとなる使い方にしても、Miroは視覚的に誰でも簡単に使えて、間違ってもすぐ元にも戻せるので生徒も先生も気軽に試すことができるので導入しやすいです。
想定していなかった発見はありますか?
宿題だと自発的に取り組ませるのは難しいのですが、Miroだと生徒自身が勝手にアクセスして、教師から指示されたわけではないのに、自分でコメントや意見を付箋に書いたりしているんです。自分のものという感覚があるのでしょうか。正直、これは想定していなかった嬉しい発見です。生徒たちはとても楽しそうにMiroを使っています。また、Miroでは他のチームの進捗を見られるので、「あ。自分のチームは遅れている。」と自分たちで気がついて急いで作業を進めたり、わからないことがあると他のチームのデータを参考にしたりするなど、お互いにうまく助け合うことができています。社会人として自立するための、良い練習になっているように思います。
また、Miroが無料で提供しているテンプレートが、予想以上に授業で活用できることがわかりました。ビジネスでは創造的な思考を支援したり、プロセスを管理したりするためのフレームワークや表現方法が日々開発されているのですが、それらが生徒の創造力や思考力を高めるために有効だと感じています。
先生方からは「Miroは何でもできてすごい!」という声があります。ただ、逆に何でもできるからこそ「もっと良い使い方はないか」という声もあり、これから、教師間のコミュニケーションにも活用しようとしています。先生の異動が多いため、引継ぎや研修は本当に大変です。グーグルスライドを利用することもできるのですが、スライドのタイトルから内容を推測することはできても、ページ1枚ずつを開いて内容を確認するのは効率があまり良くありませんし、全体が俯瞰できません。全体像が俯瞰で見られるMiroを引き継ぎや研修などにも活用していきたいと考えています。
導入の際、NRI(野村総研)がお役にたてたことはありますか?
教育現場では企業よりも厳しい条件が多く、企業向けのサービスを導入することが難しいんですが、NRIさんは細かい相談にのってくれて助かりました。実は他社の代理店さんにも相談しましたが、NRIさんが一番ノウハウがあったので決めました。
特に担当の方がMiroを使い慣れているため、的確な提案をいただけてとても助かっています。導入当初、教室に生徒を集める課題がありました。最初はGmailで生徒を呼びましたが、そのたびに先生が40名分の承認が必要でした。そこでNRIさんに相談したところ、リンクで誰でも簡単に入れるように設定する方法を教えていただき、Google ClassroomにURLを貼るだけで生徒を迅速に集められるようになり、大変便利になりました。
導入の際には本校のスケジュールに合わせて説明会を開催していただき、非常にありがたかったです。NRIさんはワークショップがとても上手なので、今後も楽しくワークショップを開催する方法などについてご相談したいと思っています。
Miroを導入したい教育現場で気を付けることはありますか?
先ほどお話したMiroボードに生徒を集めるリンクの部分が重要だと思います。学校現場向けにこの設定さえすれば、リンクを生徒に発行するだけで導入が可能です。総合の時間は、他の学校でも同様の取り組みがある可能性がありますので、Miroにある多くのテンプレートから学校で活用できるものを最初に指定して導入すると、先生方も使いやすいと思います。
教育現場ではデジタル化のムーブメントが進んでいますが、実際にはまだ紙ベースの管理に課題を抱えています。Miroであれば、新しい学び方のツールとして、情報管理の視点からも非常に便利になると感じています。
今後の展望やこの記事をお読みになる方に伝えたいことはありますか
私は、授業のデザインする際には「先生の視点で授業をデザイン」するのではなく、生徒の視点に立って、生徒が意欲を持って取り組めるように、生徒の意見を聞きながら授業をデザインしています。生徒のやる気を引き出し、学びやすい環境を作ること。その要望に応える授業をどう表現・デザインしていくかを日々考えています。
今の子供たちは、国際的に活動することが当たり前の世界で生きていくことになると思います。そのため、国際的に使われているアプリケーションを導入し、それを使う国際的な場を構築したいと思い、Miroを導入しました。理想としては、高校生のうちからMiroを使って国際的なプロジェクトを立ち上げ、そのまま大学・社会人で起業できるようにしてあげたいと考えています。そのため、Miroとともにデザイン思考やシステム思考など、今のビジネスマンが使うような思考法も教えています。
ただ、彼らは動画などのメディアが好きなので、Miroのようなビジュアルツールは好みますが、どういう使い方が教育にとって有益かは、みんなで考えていく必要があります。そのためには企業との連携が不可欠です。文科省も企業との連携を促進しており、我が校ではすでにHonda Research Institute Japanと一緒に子供たちの精神的な成長を支えるためのAIやソーシャルロボットの研究を共同で始めています。
世界の子どもたちが協働を練習できるようなインフラを作りたいと考えています。そこで、どうやって子供たちに情報発信し、コミュニケーションをとるか、最先端のビジネスシーンで使われているノウハウを、子供の関心を引くことに熱心なコンサルティングやエンターテインメント企業の方から学びながら、新しい教育のデザイン作りにおいて、企業とも一緒にコラボレーションができたら嬉しいです。
今後も、子供たちが安心して利用できる国際的な場と教材の開発に、ご協力いただけましたら幸いです。
最後に
企業での勤務経験や海外経験、世界中とのネットワークを活かし、教育の現場に新しい風を吹き込んでいる今井先生の貴重なお話を伺いました。Miroが新しい教育のデザインのお役に立てているというお話を伺い、あらためてMiroは企業のビジュアルワークスペースとしてだけではなく、教育現場など様々な場所でお役にたてることを再認識いたしました。今後もNRIは、Miroの情報を発信してまいります。