Miro(ミロ)を技術ワーキングに活用
【三菱電機株式会社様】
2023年11月24日
前編に引き続き、三菱電機株式会社 設計システム技術センター ソフトウェア技術推進部の古賀様にお話をうかがっています。
前編では、Miro(ミロ)の導入により1Day Scrumとモブワークを実践し、成功させたお話を聞かせていただきました。
今回は後編として、ワーキングにおけるMiroの活用事例について、詳しくお話をうかがいます。
Miro(ミロ)を活用したワーキングとは?
御社ではワーキングにもMiroを活用しているとうかがいました。ワーキングの概要について教えていただけますか?
(古賀様)
ワーキングというのは、複数の製作所が抱えている共通の技術的課題・テーマに対して行う技術ワーキングのことです。
例えば最近だと、「SaaSの導入どうしよう」という共通の課題に対して、ルールや方針を制定するためのワーキングが立ち上がりました。
ほかにも、「アジャイル開発をやりたいけれど、どう進めればいいか分からない」という製作所は非常に多いので、その課題に対して、会社の方針に沿った形でアジャイル開発を実践するためのルール作りをするためのワーキングが立ち上がったりしています。
私が今、その技術ワーキングの司会を担当しています。
インタビューの冒頭(前編)でもお話しましたが、これまでのワーキングは、担当者が40~50ページ分のパワーポイント資料を用意して、当日はその資料をもとに2時間近く喋り続けるというものでした。
参加者はワーキングの大半を沈黙のまま、担当者の説明をただ聞くだけという形で過ごし、途中で「何かコメントはありますか?」という問いかけに対しても、シーンと静まりかえって誰も発言しない、発言できないという状況になっていました。
Miroを導入する前の課題・問題点を教えていただけますか?
私が技術ワーキングを担当するにあたって、まず考えたのは資料作りをなくしたいということです。
40~50ページ分ものパワーポイント資料を作ったとしても、ワーキングの参加者に対してヒットするのはそのうちの極一部ですよね。
参加者それぞれが何をどう考えているかが分からないなかで、一方的な資料を提示して喋り続けたとしても、意味のあるワーキングにはならないと思いました。
そこで思いついたのが、「だったらみんなと一緒に資料を作ればいい」だったんです。
パワーポイントで資料を作る代わりに、みんなで資料を作るための、ベースとなるようなものをMiro上に作成しました。
私一人が作ったパワーポイント資料よりも、コラボレーションしながら一緒に資料を作り上げていく時間を共有するほうが、より価値のあるものになるだろうと考えたのです。
Miro(ミロ)を活用した技術ワーキングの進め方
Miro(ミロ)を活用した技術ワーキングの具体的な進め方を教えていただけますか?
(古賀様)
Miroを使ったワーキングで用意したものは、議論の材料となる簡単な資料と「チェックイン」というフレーム、そして「皆さんがこの3時間のワーキングに何を期待しているかを書いてください」という1行コメントのみです。
そしてその右側にカンバンボードを置き、皆さんが書き出してくれた「期待していること」をバックログ化して、そのカンバンに追加しました。
これで、今回の技術ワーキングにおけるプロダクトバックログが完成したことになります。
10分間でこの作業を行い、あとは残り2時間50分のなかで、今日私たちがこのワーキングでやるべきプロダクトバックログをどう進めていくかです。
私が司会者なので、作られたプロダクトバックログに対して優先順位を振り、ワークをスタートしました。
Miroにはタイマー機能もあるので、PBIごとに時間を区切り、タイムボックスを作っていきます。
時間内で何かしらの結論(インクリメント)を出して、次のプロダクトバックログに行くという流れで進めています。
それぞれのプロダクトバックログに対して議論が始まってからは、参加者から随時コメントが追記され、気になる箇所には付箋が貼られ、そこからまた会話が始まるなどして、ワーク自体がとても盛り上がっていました。
自分の考えを書き出して、さらに30秒くらいで簡単に説明してもらう時間を設けることで、その意見を出した人の想いも伝わり、そこから議論が盛り上がるケースが多かったです。
一方的な説明になりがちなパワーポイントの資料をやめてMiroを導入したことで、参加者がそれぞれ意見を出し合い、それを整理していくという、本来あるべき理想的なワーキングの形を実現できたのではないかと感じています。
これまでは、参加者が2時間近くシーンとしながら話を聞くだけで、3時間の予定が2時間で終わることも珍しくなかった技術ワーキングでしたが、Miroの導入後、参加者自らが手を動かし、考えを書き出すスタイルにしたことで、議論が長引いて時間が足りないという状態になったほどでした。
そして、ワーキングの最後10分間はふりかえりを行います。
「今日のワーキングはどうだったか」「どんなことを学べたか」「どんなことに不満があったか」などを全員で共有することで、参加者がワーキングに参加した実感をもつことができ、本来あるべきワーキングの雰囲気を作ることに成功しました。
「ただ聞いているだけ」のワーキングから、「ようやく自分の意見が言えた」などのフィードバックもあり、技術ワーキングの運営としてはかなり上手くいったのではないかと思っています。
Miro(ミロ)で今後何ができるか?
Miro(ミロ)を活用した技術ワーキングの具体的な進め方を教えていただけますか?
(古賀様)
現在は、スクラムにおけるプロダクトバックログの管理とモブワーク、そしてワーキングにMiroを活用しています。
今後の活用方法としては、他の企業様でも事例があると思いますが、Miroを活用した「オンライン展示会」に興味を持っています。
自分たちのやっていることや技術を製作所に伝える際に、現地に行って行うのではなく、Miroをポータルにして情報共有やコラボレーションができる環境を作ることで、新たな仕事の依頼や支援につながるのではないかと考えています。
また、少し先の話になりますが、もう少しチームの規模が大きくなり、かつ1つのプロダクトの開発を行うとなると、リモートでどうコラボレーションするかというのは、必ず課題になってくると思います。
例えば7人のチームがあって、それが2人・2人・3人という形で分かれて作業をするときに、それぞれのチームが別の作業をしていたとしても、全員が同じ時間に1つのMiroボードに集まって進捗報告などを書き出すようにすると、それぞれの役割と分担が明確になり、あたかも同じ部屋に集まって作業をしているような雰囲気が作れるのかなと思います。
複数のスクラムチームがあった場合も、1つのMiroボードを共有することで、島は分かれていても少し移動をすれば、ほかのチームが何をしているかが分かるようになります。
開発チームが複数あることで、必要な情報がどこにあるかが分からなくなってしまうというのは開発現場でよく起こる課題です。
1つのMiroボードで管理したほうが効率も良く、もちろんコラボレーションという意味でも望ましいのではないかと考えています。
Miro(ミロ)への要望
Miroに対して要望はありますか?
(古賀様)
細かいことですが、付箋の色が16種類しかないので、もっと増えるといいなと思いました。あとは、PDF化して資料にするときに、フレームの背景色やヘッダー・フッターが設定できると嬉しいです。
それくらいですね。
コラボレーションツールとして、Miroはよく考えられているな、と感心します。
今後もMiroを活用することでコラボレーションを充実させて、個人作業集団ではなく、チームとしての実感がもてる開発現場にしていきたいと考えています。