Case導入事例

Miro(ミロ)を1Day Scrumとモブワークに活用
【三菱電機株式会社様】

2023年11月24日

オンラインホワイトボードMiro(ミロ)は、アジャイル開発やスクラムに活用できるツールです。
今回は、Miroの導入により1Day Scrumとモブワークを実践、超高速開発を実現させた事例として、三菱電機株式会社 設計システム技術センター ソフトウェア技術推進部の古賀様にお話をうかがいました。

  • 古賀 陽一郎様,三菱電機株式会社 設計システム技術センターに所属
  • 古賀 陽一郎様

    三菱電機株式会社 設計システム技術センターに所属


    設計システム技術センターは、三菱電機グループにおける製品設計の生産性向上と設計品質向上により製品を革新する役割を担っています。

    古賀様は、アジャイル開発の社内専門家の一人として、プロダクト開発へのアジャイルの導入サポート、ワーキングなどを通したアジャイルに関する社内施策の提言、仮説検証などのより高度なアジャイル開発手法の確立などに取り組んでいます。

    ほか、最近流行りのAIを活用した開発手法の検討など、社内のソフトウェア関連施策に幅広く取り組んでいます。

Miro(ミロ)を導入した背景

まずは、御社でMiroを導入した背景を教えていただけますか?

(古賀様)
三菱電機株式会社 設計システム技術センター ソフトウェア技術推進部は、先進の製品設計・生産要素技術の研究開発と、全国の製作所への製品開発支援をメインに行う部署です。
三菱電機にはほかにも研究所がありますが、設計システム技術センターはより実現時期の早い2~3年後に必要になる技術の検討、手元で開発した技術を持って製作所のプロダクト開発を支援する役割を担っています。

今回はソフトウェア技術推進部のなかでも、全国の製作所に対して技術支援やアジャイル開発導入支援を行うチームにMiroを導入しました。

導入のきっかけはコロナ禍で、オンラインでのコラボレーションが必須となったためです。
コロナ禍以降、リモートワークが中心となったため、JiraやConfluenceをはじめ、ビデオ会議ツールや共同作業ができるOffice365など、さまざまなツールを導入し、なんとかコラボレーションをするための工夫をしていました。

Miroは以前からセミナーなどで利用したことがあったので、私は個人的に知ってはいましたが、社内でSaaSを導入する障壁が高く、自部署への導入はできていませんでした。
しかし、そのようななかで製作所に向けてアジャイル開発の導入支援、技術ワーキングを実施することになり、それならばMiroがベストだろうという話になり、上長の後押しもあり、社内承認もかなり早いスピードで降りたため、導入が決まりました。

Miroを導入する前の課題・問題点を教えていただけますか?

(古賀様)
課題はたくさんありましたが、特にワーキングには大きな問題があると感じていました。

ワーキングというのは、複数の製作所が抱えている共通の技術的課題・テーマに対して行う技術ワーキングのことです。
例えば、「アジャイル開発をやりたいけれど、どう進めればいいか分からない」という課題に対してワーキングを立ち上げて、アジャイル開発を実践するためのルール作り等をしていく…という流れです。

Miroを導入する前は、まず担当者が40~50ページ分のパワーポイント資料を作り、当日はその資料をもとにリモート会議が行われ、担当者が2時間近く喋り続けて、それを皆が沈黙して聞いているという、完全に一方通行なワーキングが開催されていました。

説明の途中で「ご意見ありますか?」と問いかけるのですが、当日に数十ページの資料を見せられたワーク参加者がコメントできるわけもなく、シーンとも静まりかえっているという状態が日常茶飯事でした。

これは担当者や参加者が悪いということではなく、仕組みが悪かったと思っています。
このようなワーキングのやり方で、なかなか意見を言える人は少ないですよね。
40~50ページ分のパワーポイント資料を作るのに膨大な時間をかけても、それに見合う価値のあるワーキングにはなっていなかったと思います。

これではワーキングを実施する意味すら無くなってしまうため、何とかしなければということもあり、リアルタイムでコラボレーションできるMiroを今すぐに導入したいと考えました。

Miro(ミロ)の良かったところ

Miroを導入してみて、良かったところを教えていただけますか?

(古賀様)
まずは、コラボレーションするときのレスポンスがすごくいいですよね。
誰が何を書いているか、どんな作業をしているかが、すぐに反映されるので、一目で分かるという点は大きいです。

あとは、フレーム機能からPDFが生成できるのも魅力的です。
これまでは事前に何十時間もかけてパワーポイント資料を作成しなければならなかったのが、Miroでワークをしながら資料自体をみんなで作っていくという仕組みが出来上がりました。

MiroはJiraと連携ができるので、MiroのボードをJira上に残せるのも良い点でした。
以前はJiraだけを使っていたのですが、Jiraの場合、チケットを編集している人だけが作業をしていて、それ以外の人はそれをじっと画面上で見ているというアイドルタイムがどうしても生まれてしまいます。
JiraのフロントエンドとしてMiroを置くことで、みんなが一緒に作業をすることができるので、全員に参加意識が生まれて、「今日は○○をしようと思っている」「○○が遅れているから助けて欲しい」というような会話が積極的に行われるようになりました。

Miro(ミロ)で実現した1Day Scrumとは?

今回Miroを導入した結果、1Day Scrumに成功したとうかがっています。
なぜ1DayScrumを実践しようとお考えになったのか、詳しく教えていただけますか?

(古賀様)
1DayScrumというのは、スプリント期間を1日に設定して行うスクラムのことです。

スクラムの場合、通常だとスプリント期間を1~2週間に設定することが多いですよね。
ですが、私は経験値の浅いチームほど、スプリント期間を短く設定したほうがいいと思っています。

なぜなら、2週間後のプロダクトの形をイメージできるというのは、結構レベルが高いチームです。そもそも2週間後に何ができるか分かりませんという状態で、スプリントバックログを作ってスプリント計画を立てても、なかなか上手くいかないんです。
なので、一般的にはスプリント期間を1週間に設定するチームが多いと思います。

私のチームは少々特殊で、全国の製作所の支援や自主開発を行っているため、3人のチームで個別の案件が常に15案件以上ある状態です。
その代わり個々の案件はとても小さいため、1~2週間というスプリント期間は長すぎて、私のチームには合わなかったのです。

スクラムは、素早くフィードバックを獲得して、その結果を受けて次に何をやるべきかを決めていかなければ、求められていないものを開発してしまうリスクが高くなります。

個々の案件が小さければ、1日でも何かしらのインクリメント(成果物)を出すことができます。
「毎日、何かしらのフィードバックを受けられるようにしよう」ということで、1Day Scrumを始めることにしました。

Miro(ミロ)を活用した1Day Scrumの進め方

1DayScrumの具体的な進め方を教えていただけますか?

(古賀様)
まずは毎朝9:10頃、Miroのボードにメンバーが集まり、スプリント計画を行うところから1Day Scrumは始まります。

1DSCRUMボード

1つのMiroボードを使い、案件の種類ごとに5つの島(領域・ドメイン)に分けていますが、このうち2つがメインとなる案件なので、そこにはロードマップをつけています。

ロードマップ

ロードマップもメンバー全員で作成し、ここには中長期の目標を落とし込んで明確化します。

Sprint Planning

そのうえで、ロードマップ上の目標を達成するために、今日は僕達は何ができるのかのスプリント計画を立てていきます。

1Day Scrumのスプリント計画は、1日で何がやれるかを話し合う場です。
1日でやれることは限られているため、いろいろな島に手を広げ過ぎることはせず、一つのことに集中して話し合います。
スプリント計画にかかる時間は毎日30分程度です。

島ごとに担当分けはせず、メンバー3人で話し合いながら今日は何をするかを決めていきます。
さらに、モブワーク・ペアワーク形式で開発を進めることで、情報共有のための文書を書き起こす手間も極力無くしています。

Miro(ミロ)導入後、1Day Scrumを実践した効果

Miroを導入する前にも1Day Scrumを試みたことはあったのでしょうか?

(古賀様)
Jira上で1Day Scrumを試してみたことはあったのですが、エピックごとにバックログが分かれていくので、各エピックの担当者がいつの間にか固定されてしまいます。
結局、個別に作業をするので、ほかのメンバーが入る余地がないという状態になっていました。
個人作業集団になってしまっていたので、理想の形ではなかったです。

そこで、Miroのホワイトボードでは、画面構成上、意識的にメンバーを島の外に置くようにして、誰かがその島に張り付くということがないようにしました。

この島が誰の担当ということではなく、「今日は全員でこの島をやる」という形にすることで、個別に作業をする機会を意識的に減らし、ペアワーク・モブワークの機会を増やすことができました。

Miro 導入後、1Day Scrumを実践した効果はありましたか?

(古賀様)
はい、定量的にも定性的にも効果はあったと感じています。

定量的な変化

まず、定量的な変化で言えば、Miro導入前の2週間スプリントと比較して、1日スプリントでのPBIの平均生存期間は約14日から約1.6日に。
1.6日の中には、特定の人が4~5日かけてやる調査系のPBIがいくらか含まれています。それ以外の大半のPBIは1日で完了しています。

スプリント内に終わるPBIの比率も56%から88%まで向上、9割方終わる形になるので、「仕事が終わった」という達成感を得ることができます。

さらに、これまでのJiraを使った2週間スプリントでは、先ほどもお話した通り、個人作業集団になってしまっていたため、モブワーク・ペアワーク形式で開発を行う機会は1年間で37回という悲しい結果になっていました。
それが、1日スプリントを実践したことによって、4ヶ月間で70回のモブワーク・ペアワークを実施していました。このペースで続けると年間210回という7倍近い数字になります。

この数字からも、確かに仕事のやり方、進め方が変わったんだなということが分かり、予想していた以上に1Day Scrumの効果は高かったんだなと感じました。

定量的な変化

ほかにも、2週間スプリントから1日スプリントに変わったことで、Jiraのストーリーが大きく減少して、代わりにタスクが増えたという結果が出ています。
モブワーク・ペアワークの比率も4%から15%になりました。



また、定性的な変化としては、Miroを導入して1Day Scrumを実践したことで、どんなことが変わったかをチームメンバーにヒアリングしてみたんです。 すると、面白いフィードバックがもらえました

チームのフィードバック-1
チームのフィードバック-2

2週間スプリントのときは、「ギスギスしていた」「分からないことがあっても相談しづらい」などを感じていたようなのですが、1日スプリントに変わってからは「会話が増えた」「チームの雰囲気が良くなった」「モブワークの効果が大きいです」「相談しやすくなった」など、のポジティブな意見が多かったです。
多分、みんな楽しいんだろうなと思いました(笑)

特にMiroを導入したことで、「積極的に手を動かし、発言するワーク・打ち合わせが増えた」「考えたことを発言したり、書き出したりしやすい」などの意見もあり、感覚的なフィードバックでも今のほうがいいんだなということが良く分かりました。

「慣れ合いにならないように注意が必要」「一歩間違うと監視されているような息苦しさが出てくるかも」などの意見もありましたが、全体的には良い成果が出ているのではないかと思っています。


古賀様から見ても、1Day Scrumを実践して変化はありましたか?

(古賀様)
私が1Day Scrumを実践して1番大きく感じた変化が、必ず1日1~2回はモブワークをするようになったということです。

実は、私自身もどちらかというと個人作業を得意とするタイプなんです。
ですが、モブワークをするようになったことで、自分一人だけが理解して進めるのではなく、みんなで会話をしながら開発が進んでいくようになりました。

みんなで話し合いながら進めることで、自分だけで閉じていた作業がかなり減り、1人で仕事をしているという感覚から、まさにチームでスクラムを組んで目標に向かって走っているというのが、ようやく実感できたと思っています。

モブワークでここまで変わることが分かったのは大きな成果でしたね。

ただモブワークをやる場合、やはりツールがないとだいぶ厳しいというのがあります。
それぞれが何をしようとしているのかを細かく共有しないと、共同作業は上手くいかないです。

Miroを導入してからは、今から自分たちが何をするかを、小さなサブタスクとして分解して、まずMiro上に書き出しています。
これをすることで、目的・ゴールが明確になり、そのために今からやるべきサブタスクが整理されるので、1Day Scrumとモブワークを成功させるために、Miroは欠かせないツールだったと思っています。

Miro(ミロ)で今後さらに実現したいこと

Miroを使って今後どんなことをやっていきたいか、実現したいものなどあれば、教えてください。

(古賀様)
今後は、今自分たちがやっているMiro×1Day Scrumのやり方を、ほかの製作所にも広げていきたいという気持ちがあります。

今でもアジャイル開発の導入を支援している製作所には、Miroのホワイトボードを渡して、スクラムを実践してもらっています。

最初からMiroのボードを使うことで、個人作業集団にはならず、メンバーがコラボレーションしながらPBIを分解したり、どんな機能が必要になるかというやり取りをしたりなど、盛り上がる姿が見られているので、このような事例を集めていきたいです。

当たり前の話ですが、Miroというツールだけがあってもスクラムは成功しません。 Miroを使ってどうやってワークや計画、ほかのスクラムのイベントを進めるのか、Miroとモブワークはどうつながるのかなどを、きちんと整理してひとつの形にして、全国の製作所にシェアしていくのが今後の目標です。

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